『月刊すこ~れ』連載 「子どものなぜへのある父親の私信」第2回(2018年10月号掲載)

『月刊すこ~れ』2018年10月号掲載の連載第2回です。

Q 大人はどうしてみな仕事をするの?

A 大人はだいたい、「忙しい忙しい」と言いながら、朝、仕事に出かけ、夜までずっと働いています。家でずっと家事をする場合もあるけれど、それも含めて大人はみな、多かれ少なかれ何らかの形で仕事をして生きている。時には「大変だ、いやだなあ」と言いながら。でも、やめるわけにはいかなそう。いったいどうしてなんだろう?
 私たち人間が、集まってできる集団やその場所を「社会」といいます。その中で、私たちはみな、電車に乗ったり、お店で物を買ったり、学校に行ったりして毎日を過ごしています。みながそうやって生活していくためには、電車を動かす人がいて、物を作る人や売る人がいて、学校には先生がいなければなりません。その他にも、道路を作る人、病気の人を診てくれるお医者さん、テレビの番組を作る人……などなど、考えていくと、私たちが普段、何気なく使っているものにも場所にも、必ずそこで働いている人がいることがわかります。つまり、社会とは、みながそれぞれ働いて、互いに何らかの役割を果たし合うことで成り立っているのです。
 それぞれが自分の仕事をし、お互いにできることを交換し合う。その交換を簡単にするための道具がお金です。自分の仕事をしてお金をもらう、そしてそのお金を他の人に渡すことで、その人の仕事を利用させてもらうのです。
 お金は本来、そのように何かと何かを交換する際に、間に入ってくれる道具として作られたのだけれど、それがいつしかいろんな問題も生むようにもなってしまった。そのことについてはまた別の機会に書くとして、ここでは、なぜ大人がみな仕事をしてお金を稼がないといけないのかがわかってもらえたらと思います。
 ただし、様々な理由で働けない人、働かない人もいます。そういう人は社会の中で役割を果たしていないことになる? だとしたらそれはいけないこと? いや、どちらも、決してそうでありません。それはなぜって? 大切なことなので、この問いもいずれこのコーナーで考えてみたいと思います。

Q「将来、プロのサッカー選手になりたい」って言ったら、「難しいからやめた方がいい」って言われました。難しいかどうかって、最初から決まってるの?

A サッカー選手のみならず、ミュージシャン、学者……、それにいまはユーチューバ―も入るかな。そういった人気のある職業に将来就きたい人はきっと少なくないでしょう。でもその気持ちを大人に言って、「それは難しいから、もっと現実的になりなさい」などと言われたことがあるかもしれない。さて、本当にそうなんだろうか?
 みんなが「なりたい!」と思う仕事に就くのは、おそらく簡単ではありません。きっといろんな壁を乗り越えなければならないし、すごい努力が必要かもしれません。もし身近な大人に「難しいよ」って言われたとすれば、それはきっと、なれなくて悲しんだり困ったりしないように、そう言ってくれたのだとは思います。
 でもぼくは、「○○になりたい」という気持ちがあるのなら、その気持ちを大切にして、がんばって目指してほしい!って思います。
 いまその仕事に就いて活躍している人でも、最初から「自分はなれる」と思っていた人は決して多くはないはずです。ぼくがよく感じるのは、なれるかなれないかはやってみないと決してわからないということ。そして、○○になりたいという夢を叶えた人の多くは、必ずしも才能があったから叶ったのではない。きっとすごい努力をしているのだけれど、その部分は周りには見えにくいから、「あの人は、きっと才能があったからできたんだ」って想像で言われているだけだということです。
 大事なのは、とにかくやってみることです。では、それでもなれなかったらどうするかって? うん、それは辛いことかもしれないけれど、そういう場合もやはりある。もしかすると、その場合の方が多いぐらいかもしれません。でも、じゃあ、やらない方がいいのかといえば決してそうではありません。やってみるということ自体が、そしてうまくいかなくて悩むことそのものが、とても大切な経験だからです。その経験によって必ず、それまでは見えなかった世界が見えてきます。そして、生きる世界がぐっと広がっていくのです。そう信じて、思いっきりがんばって!

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