東えりかさんの『見えない死神』を読んで。愛にあふれる魂の一冊。

東えりかさんの『見えない死神』を読みました。それまで全く元気だった夫・保雄さんが突然の腹痛で倒れ、しかし長く原因がわからないまま衰弱され、3か月ほどが経ってから「原発不明がん」と診断されて亡くなられてしまったという出来事について書かれたノンフィクションです。著者の東さんにとってこれ以上なく辛く困難な出来事ながら、しかしその深い悲しみと苦しみを原動力に保雄さんの最期を描き切った、本当に心を打つ一冊でした。突然死の淵に立たされることになってしまった保雄さんへの愛情が一文一文から感じられて、辛く悲しい内容ながら、保雄さんへのこれ以上ない鎮魂の書であり、愛に溢れる本であると感じました。

そして東さんは、保雄さんの死後からまだ遠くない時期に、保雄さんの命を奪った原発不明がんとは何かをできる限りよく理解すべく、医療者への取材を重ねます。それが後半の内容になるのですが、この稀有な病気が少しでも広く知られ、いま苦しんでいる人や未来の患者・家族に有用な情報を提供できるよう、そしておそらく保雄さんの死をよりよく受け止められるよう、深い悲しみの中にある時期に取材・執筆を進めていった東さんの姿勢に深く感服しました。

その中で東さんは、当初不信感を抱いた医師への取材も行っています。他の医師からの見解も書かれていて、その医師への客観的な評価が記されています。そうした点も含めて、医療者へのリスペクトもとても感じられる内容で、本当に貴重な、魂のこもった記録だと感じました。読み終わって改めて、言葉の力、書くことの力を感じさせられ、東さんの保雄さんへの愛の深さに打たれました。ぜひ広く読まれてほしい一冊です。