「村林由貴が描く禅の世界」がついにスタート!

絵師・村林由貴さんが11年かけて描いた渾身の襖絵の一般公開が、12月24日からからついに始まりました。

特別公開詳細はこちら 

2011年から今年まで、24歳から35歳という時期を、村林さんは、まさにこの襖絵を描くためだけに生きてきたと言っても過言ではない日々を送ってきました。

寺に住み込み、絵の技術を磨き、禅の修行を繰り返し、悩みながら、一歩一歩描き進める日々。行き詰まって描けなくなり、寺も離れた時期もあり、しかし、その時期も乗り越え、モチーフを固め、膨大な量の絵を描き続けた末に、仕上げていった退蔵院方丈の5部屋76面の襖絵。

約6年の間、修行や訓練を重ねて描くべきものが決まり、そこからさらに2年ほどかけて本番に向けて技術を高め、そして本番を描き始めてから完成までが3年。

それだけの間、禅に身を投じて、深く自分と向き合った結果、何百年もの間描きつがれてきた対象へと行き着いたところに、大きなすごみ、そして村林さんの過ごした日々の重さを感じます。

プロジェクト開始当時からこの11年間、ぼくは取材者の立場で、村林さんの姿を近くで見させてもらってきました。ぼく自身、彼女の創作の姿勢にはとても影響を受けていて、また、途中の彼女の苦労も肌で感じてきたため、本当にこの絵の完成には感無量でした。

一般公開が始まってからいろんな方がこの絵を見る様子もここ何日かで見させてもらってきましたが、多くの人が絵に、彼女の姿勢に、感嘆する姿にぼく自身も感激しています。

本当に、彼女が人生をかけて描いた大作です。

引き続き是非多くの人に見てもらいたいです。

村林さんについて、このプロジェクトについて、ぼくが過去に書いた記事の一部がこのウェブサイトにpdfでアップされています。すでに絵を見られた方、これから見ようという方、併せてこちらの記事を読んでいただくとより楽しめると思います。

『新潮45』2012年10月号
<よみがえる「お抱え絵師」 京都・妙心寺「退蔵院方丈襖絵プロジェクト」>
プロジェクトが始まった当初の村林さんの姿を描いたものです。

『芸術新潮』2013年5月号
<妙心寺退蔵院の襖絵プロジェクトを支える職人たち>
プロジェクトのもう一つのカギを握る、職人さんたちの仕事についてです。

『文藝春秋』2020年6月号
「令和の開拓者たち」絵師・村林 由貴
京都・妙心寺退蔵院の襖絵を描く“現代の御用絵師”村林由貴の「新しい水墨画」

退蔵院の襖絵を描き出して、いよいよプロジェクト終盤に向かう村林さんの姿を描いたもの。リンク先は、文藝春秋digitalのサイトで記事全体の前半部分が読めます。彼女の苦悩の部分は後半にあり、そちらが話の中心だったのでそこを読んでもらいたいですが…。pdfがアップできるようになれば、後日そうします。




共同通信配信の書評記事『寄生生物の果てしなき進化』

少し前になってしまいますが、共同通信配信の記事として、『寄生生物の果てしなき進化』(トゥオマス・アイヴェロ著、セルボ貴子訳、草思社)の書評を書きました。各種細菌やウィルスなど、さまざまな「寄生生物」が進化してきた壮大で驚くべき歴史が見えてくる一冊です。コロナ禍を経たいま、誰にとっても身近な内容なのではないかと思います。興味を持ってもらえたら是非本を手に取ってみてください。共同通信配信の記事なので、多数の地方紙に掲載されました。写真は河北新報掲載の記事です。

読売新聞夕刊「ひらづみ!」『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(川内有緒著)

読売新聞月曜夕刊 本よみうり堂 の「ひらづみ!」欄の書評コラム、担当7回目(5月30日)は、川内有緒さんの『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』を紹介しました。タイトル通りの内容ながら、いい意味で思わぬ方向に話が展開する、自由さあふれるノンフィクションでした。ほんとにいろんなことを考えさせてくれる一冊です。大宅賞候補にも。

ロームシアター京都のウェブサイトにコラム執筆

ロームシアター京都のウェブサイトにコラムを書きました。
ロームシアター京都は2022年度、「旅」をテーマに自主事業ラインアップを決定。
そのラインアップテーマ「旅」への応答、ということで寄稿しました。

2022年度自主事業ラインアップテーマへの応答
終わりがあるからこそ、と思えるように


旅も人生も、終わりがあるからいい、と思い続けてきました。終わりがあるから感動があるし、今日を充実させようと思うのだと。それが5年間の旅を終えての実感でした。しかし最近そう思えない自分がいます。そんな気持ちを、いまの状況含め、率直に書きました。そしてなぜ旅が必要なのかを。