藤原辰史さん『戦争と農業』

制作に関わらせていただいた、藤原辰史さんの『戦争と農業』(インターナショナル新書、集英社、2017年10月刊行)が、早々に重版に。藤原さんは農業史やナチスの研究で知られる京大の先生で、『ナチスのキッチン』という本でお名前は前から知っていたのですが、この本の制作で2年近く前から一緒に仕事をさせてもらうようになって、人物、研究の素晴らしさにとても惹かれるようになりました。

一時期、この本の関係で藤原さんの講演をいくつも聴いて回っていましたが、聴く度に心打たれてぐっと来てしまう、という連続でした。そして、藤原さんの、世の中に対する視線はとても熱く、温かく、優しく、信頼できると感じるようになりました。同じ年ということもあって、以来とても親しくさせてもらうようになり、本当に知り合えてよかったと思う人の一人です。

この本には、そんな藤原さんの真摯な研究の積み重ねと熱い思いが詰まっています。そして押しつけがましくないゆえに、ぐっとこちらに迫ってくるというか、いろんなことを考えさせられる一冊です。

読んだ方々からもとてもいい感想をいただいていて、これからもきっと広く読み継がれる一冊になる気がしています。

是非手に取っていただければ嬉しいです。

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3年前に書いた一つの記事から

3年前にある記事を書いたことがFBの過去の思い出機能みたいなのから上がってきました。この共同通信配信の記事は、短いけど書けて嬉しかったもので、つい懐かしくなってしまいました。(下の写真)

ここ数ヶ月、吃音ルポの連載を書籍にまとめるために再構成し直してて、ようやくかなり形になりつつあるのですが、まだいくつもの山があり、起きてる間はずっと頭を悩ましています。

このルポのそもそもの原型となるものを書いたのは15年前、日本を出る前年のことで、それを熱烈な手紙とともに沢木耕太郎さんにお送りしたところ、日本を出る直前に携帯に電話をいただきました。そこで沢木さんにお言葉をいただいたことが自分にとって、旅をしながら書き続ける大きな原動力になりました。

あれから15年。自分も沢木さんのように書きたいと思いつつやってきて、その壁の高さに圧倒されてきました。ようやくあの時に書き始めたルポが本になる、というところ。それだけに、悔いのない一冊に仕上げたい。

下の記事を久々に読み返して、そんなことを思った次第です。
 

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明後日10月28日土曜日、京都岡崎の蔦屋書店さんでのイベントでご紹介予定の本を読み直しています。

明後日10月28日土曜日、京都岡崎の蔦屋書店さんでのイベントでご紹介予定の本を読み直しています。

『荒野へ』(ジョン・クラカワー)、『檀』(沢木耕太郎)、『最後の冒険家』(石川直樹)。他もいろいろと話の中でご紹介する予定ですが、今回は主に、それぞれ思い出深いこの3冊を。

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『荒野へ』を読むと、自分に旅の魅力を教えてくれた友人かつ先輩のことを思い出します(『遊牧夫婦』登場のUさん)。彼は心から旅を愛し、旅によって変わり、自らの信念を貫いて28歳で亡くなりました。彼が短く濃密な人生の中で僕の心に残したものはとても大きく、いまもふとしたときに、彼に時々問われる気がします。「そんな生き方をしていてお前はいいのか」と。

『檀』は、読み返す度に心の深いところに響きます。沢木耕太郎作品で最も好きなものの1つ。書く側として、書かれる側の複雑な思いについて深く考えさせてくれるからでしょうか。沢木さんの、書かれる側への敬意が、檀ヨソ子さんの言葉の端々に現れていて、自分も旅をしながらこの本を読んで受けた影響がいまも色濃く残っています。そして後半、舞台がポルトガルに移る辺りは、なんかいつもこみ上げてくるものがあります。同じ人間でも、別の土地で会うとき、また違った関係になるのかも、と思ったりも。

『最後の冒険家』は、冒険の本として本当に素晴らしい作品です。石川直樹さんの、「冒険」に対する真摯な姿勢と内面の葛藤や、もう一人の主人公である神田道夫さんの冒険に対する突き抜けた思いと人生は、ずっと心に残っています。人はなぜ冒険をするのか、人間にとって冒険とは何なのかということを、鮮烈な物語とともに深く考えさせてくれます。

この3冊を軸に、グーグルアースで場所を実際に見て、思い浮かべ、自分の体験と重ね、写真なども交えながら、旅について、紀行作品について、いろいろと感じていただける時間にできればと思っています。

まだ席はある感じなので、よろしければ是非いらしてください!

【トークイベント】旅を読む、旅を書く ―ノンフィクションライター近藤雄生と読む旅行記3選―
http://real.tsite.jp/kyoto-okazaki/event-news/2017/…/-3.html